日本の主要ECサイト114件を調べたら、96%がGA4を入れていて、46%に廃止済みタグが残っていた — 計測タグ・同意バナー・表示速度の実態
14ジャンル114件の国内主要ECサイトのトップページを、実際のブラウザで1件ずつ開いて調べました。GA4/GTMの導入率96%、旧ユニバーサルアナリティクスの残骸46%、1サイトあたりのマーケティングタグは中央値7本、Cookie同意バナーは25%、読み込み完了の中央値3.9秒。数字の裏にある「入れたまま」の実態と、自分の店で確かめる方法を書きます。
- 計測
- 数字の読み方
「アクセス解析は入れているけれど、見ていない」——この連載の1本目で書いたことが、どれくらい一般的なのかを確かめたくなりました。中の人の頭の中は外から見えませんが、サイトに何が入っているかは見えます。そこで、日本の主要な EC サイト 114 件を、実際のブラウザで1件ずつ開いて調べました。
結論を先に書くと、こうです。
- GA4 または Google タグマネージャーが入っているのは 96%(110/114)。アクセス解析は「ほぼ全店に入っている」
- 46%(52/114)に、2年前に廃止された旧ユニバーサル アナリティクス(UA)のタグや ID が残っている
- 1サイトあたりのマーケティング系タグは中央値 7本。76% が5本以上、71% が広告ピクセルを3種類以上
- Cookie の同意バナーを出しているのは 25%(28/114)
- ページの読み込み完了は中央値 3.9秒。2秒未満は 20%、5秒以上が 36%
- 外部ドメインの数と読み込み時間は連動する。外部ドメイン 20 未満のサイトは中央値 1.9秒、40 以上は 5.4秒
調べ方(先に限界も書きます)
- 対象: 14 ジャンル(食品・飲料 21、ファッション 17、コスメ 12、家具・インテリア 11、家電 10、スポーツ・アウトドア 8、生活雑貨・文具 8、メガネ・靴 6、ベビー 5、本・ホビー 5、ペット 4、健康 3、ジュエリー 2、花・ギフト 2)の自社 EC サイト(モールは除く)。よく知られたブランドの公式ストアを私が選んだので、無作為抽出ではありません。大手寄りの標本です
- 方法: 2026年9月5日、日本国内の一般的な回線・デスクトップの Chrome で、各サイトのトップページを1回開き、読み込み完了から5秒後に、ページのソースと読み込まれたリソースから計測タグ・プラットフォーム・同意バナー・読み込み時間・転送量を機械的に読み取りました。124 件を試みて、10 件は読み込み失敗などで除外し、114 件を集計しています
- 限界: トップページだけ(商品ページや決済ページは見ていません)。デスクトップの1回計測なので、モバイルの Lighthouse スコアとは別物です。タグの検出はソースとネットワークに現れたものだけで、条件付きで発火するタグは数えられていません(=実際はもっと多い可能性があります)。同意バナーは「固定表示で Cookie と同意の語を含む要素」または既知の同意管理ツールの検出で、見落としがあり得ます
- 店名は出しません。この調査の目的は個別の店を評価することではなく、傾向を知ることです。ジャンル別の集計だけ載せます
1. アクセス解析は、ほぼ全店に入っている
GA4 の測定 ID かタグを直接検出できたのが 107 件(94%)、Google タグマネージャーが 102 件(89%)、どちらかがあるのが 110 件(96%)。残り 4 件も、検出しにくい形で入っている可能性があります。
つまり「アクセス解析を入れるべきか」という段階は、日本の主要 EC ではとっくに終わっています。問題は入っているかどうかではなく、そこから何かが決まっているかです。それは外からは見えません。ただ、次の数字がヒントになります。
2. 46% に、廃止済みの UA が残っている
旧バージョンのユニバーサル アナリティクス(UA)は 2023年7月に計測を止め、2024年7月にデータごと削除されました。それから2年以上たった今、52 件(46%)のトップページに UA-XXXXXXX-X 形式の ID か、旧 analytics.js の読み込みが残っています。
いくつかのサイトのソースを目で確かめると、ga('create', 'UA-XXXXXXXX-1') という旧コードが、GA4 のタグのすぐ隣にそのまま残っていました。これらのタグは、いま何もしていません。データを送る先がありません。それでも残っている理由は、おそらく単純で、誰も見ていないからです。GA4 に移行したときに古いタグを消す作業は、解析画面を毎週開いている人なら気づきますが、「入れたまま」の店では起きません。
これは「入れたまま」の状態を、外から観測できる数少ない指標だと思っています。ジャンル別では、食品・飲料 21 件中 12 件、生活雑貨・文具 8 件中 5 件、家電 10 件中 5 件に残っていました。
3. タグは中央値 7本。71% が広告ピクセル 3種類以上
検出したタグの内訳です(114 件中)。
| タグ | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| GA4 | 107 | 94% |
| Google タグマネージャー | 102 | 89% |
| Google 広告 | 89 | 78% |
| Meta ピクセル | 89 | 78% |
| Yahoo! 広告 | 80 | 70% |
| Microsoft Clarity(行動記録) | 61 | 54% |
| LINE タグ | 58 | 51% |
| 旧 UA(廃止済み) | 52 | 46% |
| Criteo | 49 | 43% |
| TikTok | 43 | 38% |
| KARTE | 15 | 13% |
| Ptengine | 10 | 9% |
1サイトあたりの本数は中央値 7本、5本以上が 87 件(76%)、10本以上が 13 件。広告ピクセルを3種類以上入れているのは 81 件(71%)で、Clarity や KARTE のような行動記録・接客ツールを入れているのは 72 件(63%)です。
これ自体は悪いことではありません。広告を運用していれば、媒体ごとのピクセルは必要です。ただ、次の2つの数字と並べると意味が変わります。
4. Cookie の同意バナーを出しているのは 25%
固定表示の同意バナー、または既知の同意管理ツール(OneTrust 等)を検出できたのは **28 件(25%)**でした。4分の3のサイトは、上の 7本のタグを、バナーなしで動かしています。
これは法律違反という話ではありません。別の記事で整理したとおり、日本の物販 EC は外部送信規律の対象外とされていて、同意が要るかどうかは広告連携の使い方によります。ここで言いたいのは、日本の EC の主流は「バナーを出さない」側にあるという事実と、もし将来バナーが必要になったとき、7本のタグの分母が一斉に欠け始める、という構造です。Cookie を使わない計測がその分母を守る、というのが私の立場ですが、それは製品の話なので最後に回します。
ジャンル別では、家電 10 件中 4 件、メガネ・靴 6 件中 3 件、スポーツ 8 件中 3 件が出していて、生活雑貨・文具は 8 件中 0 件でした。海外ブランドや海外展開しているジャンルほど出している傾向に見えますが、件数が少ないので傾向止まりです。
5. 読み込み完了は中央値 3.9秒。外部ドメインが増えるほど遅い
デスクトップの一般的な回線で、ページの読み込み完了(load イベント)までの時間は中央値 3.9秒でした。
| 読み込み完了まで | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 2秒未満 | 23 | 20% |
| 2〜3秒 | 21 | 19% |
| 3〜5秒 | 28 | 25% |
| 5〜10秒 | 34 | 30% |
| 10秒以上 | 7 | 6% |
転送量は中央値 2.8MB、10MB を超えるサイトが 18 件(16%)。読み込んだ外部ドメイン(自社以外のホスト)の数は中央値 32、最大 82 でした。
そして、外部ドメインの数と読み込み時間ははっきり連動しています。
| 外部ドメインの数 | 件数 | 読み込み完了の中央値 |
|---|---|---|
| 20 未満 | 33 | 1.9秒 |
| 20〜39 | 37 | 3.5秒 |
| 40 以上 | 43 | 5.4秒 |
タグの本数と読み込み時間の相関係数は 0.54 でした。もちろん、タグが多いサイトは画像も多く機能も多い大手なので、タグだけが原因ではありません。それでも、「タグを1本足すたびに、外部ドメインへの接続が増え、読み込みが伸びる」という方向は、この数字と整合します。
Google と Deloitte の調査(2020年)では、モバイルの表示速度が 0.1秒速くなると小売の CVR が 8.4% 上がりました。今回の計測はデスクトップなので数字は直接比べられませんが、5秒以上かかっているサイトが3分の1あるという事実は、モバイルではさらに厳しいと考えるのが自然です。
ジャンル別の中央値は、健康・サプリ 0.9秒(3件)、食品・飲料 2.4秒、家電 2.9秒、コスメ 3.5秒、家具 3.7秒、ファッション 4.3秒、スポーツ 4.8秒、本・ホビー 6.7秒、メガネ・靴 7.6秒でした。ファッションとスポーツは外部ドメインの中央値が 47〜49 と最も多く、読み込みも遅い側に寄っています。
6. まとめ:「入れたまま」は、外から見える
114 件の主要 EC を見て分かったのは、次の3点です。
- アクセス解析は全店に入っている。入っていないことが問題の店は、もうほとんど無い
- 半分近くの店で、2年前に死んだタグが放置されている。「入れたまま」は本当に一般的
- タグは増え続け、外部ドメインが 40 を超えると読み込みは 5秒台になる。誰も棚卸しをしていない
自分の店で確かめるなら、やることは2つです。ブラウザの開発者ツールでネットワークタブを開き、トップページを読み込んで、自社以外のドメインがいくつあるかを数える。そして、ページのソースで UA- を検索する。残っていたら、それは「最後に解析の設定を見直した日」がいつだったかを教えてくれます。
この調査で使ったもの
この調査は、NextRise Analytics の無料診断と同じ検出ロジック(計測タグ・プラットフォームの判定)をブラウザで走らせたものです。無料診断に自分の店の URL を入れると、表示速度の採点に加えて、同じ計測タグの検出結果が登録なしで出ます。
そして NextRise の計測タグは約 5KB・外部ドメイン 1つ・Cookie なしで、上の表にタグを足しても読み込みと同意の分母を増やさないように作ってあります。GA4 と並べて貼れるので、いま入っているものを消す必要はありません。
集計に使ったデータをそのまま置いておきます。114行・1行が1サイトで、ジャンルと各指標だけが入っています(店名とURLは入っていません)。
列は genre, platform_detected, ga4, gtm, ua_remnant, ad_pixels, behavior_tools, tags_total, consent_banner, load_ms, transfer_kb, js_kb, third_party_hosts, scripts です。この記事の数字は、すべてこのファイルから出しています。数え直していただいて構いません。
調査概要: 2026年9月5日/国内 EC 14 ジャンル 124 件を試行・114 件を集計/デスクトップ Chrome・日本国内の一般的な回線・トップページ1回/検出はページソースと読み込み済みリソースの文字列照合(GA4・GTM・UA・広告ピクセル・行動記録ツール・同意管理ツール)/読み込み時間は Navigation Timing の loadEventEnd/転送量は Resource Timing の transferSize 合計。同一ブラウザでの再訪によるキャッシュの影響を避けるため、各サイトは原則として初回訪問のみ(一部、事前確認で開いたサイトを含む)。
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