Cookie を使わないアクセス解析は、何が違うのか — 同意バナー・ITP・広告ブロッカーとの関係
「cookieless」の解析ツールが増えていますが、Cookie を使わないと何が変わり、何が変わらないのか。同意バナーの要否、Safari の ITP、広告ブロッカー、そして「ユーザー数」の数え方の違いまで、EC 運営者向けに整理しました。
- プライバシー
- 計測
アクセス解析ツールの説明に「Cookie 不要」「同意バナー不要」と書いてあるのを見て、「本当に? 何が違うの?」と思った方向けの記事です。NextRise Analytics も cookieless の計測を採用していますが、ここでは製品の宣伝ではなく、仕組みとして何が変わるのかを説明します。
従来の解析は、なぜ Cookie を使うのか
「同じ人がまた来た」を知るためです。従来の解析タグは、初回訪問時にブラウザへ 識別子(クライアント ID) を Cookie として書き込み、次の訪問でそれを読み取って「この人は2回目」「先週も来ていた」と判定します。ユーザー数・新規/リピート・リピート率は、この識別子の上に成り立っています。
便利な半面、識別子を端末に保存することそのものが、EU の ePrivacy 指令をはじめ多くの国・地域で同意の対象になりました。「端末に情報を書き込む/読み出す」行為が規制の入口になっているためです。日本では 2023 年施行の改正電気通信事業法(外部送信規律)が、Cookie の有無にかかわらず「利用者の情報を外部に送信する仕組み」について何を送っているかの公表・通知を求めています。同意バナーとは別の義務なので、cookieless の解析でも、プライバシーポリシー等で計測の内容を明示しておくのが確実です。
Cookie を使わないと、どうやって「同じ人」を判定するのか
端末に何も書かずに済ませる代表的な方法が、日替わりのハッシュです。NextRise Analytics の場合、訪問者の識別子は次の材料をまとめてハッシュ化した値です。
ハッシュ(その日限りのソルト + サイト ID + IP アドレス + ユーザーエージェント)
- ソルトは毎日変わるので、翌日には同じ人でも別の ID になります。日をまたいだ追跡はできません。
- サイト ID が混ざっているので、別のサイトでの訪問とは結び付きません。
- IP とユーザーエージェントは保存しません。 ハッシュを作ったあとに捨てます。
端末には何も書き込まず、保存されるのは元に戻せないハッシュだけ——これが「同意バナーを出さずに設置できる」と言える根拠です。
変わること・変わらないこと
| Cookie を使う解析 | 日替わりハッシュの解析 | |
|---|---|---|
| 同意バナー | 多くの地域で必要 | 一般に不要(後述の注意あり) |
| セッション数・ページビュー | 同じ | 同じ |
| 1日の中のユーザー数・新規/リピート | 取れる | 取れる |
| 日をまたぐユーザー数・リピート率 | 取れる | 取れない(同じ人が別の日は別人として数えられる) |
| Safari の ITP による影響 | 1〜7日で Cookie が消され、リピートが新規に化ける | もともと日をまたいで追跡しないので影響なし |
| 広告ブロッカー | 一部の送信が止まる | 同じく一部の送信が止まる(Cookie の有無は関係ない) |
| 売上・CVR・流入元・ページ別の分析 | 同じ | 同じ |
要点は2つです。
- EC の売上分析に要る数字は、ほとんど変わらない。 どのページが・どの流入から・どれだけ売れたかは、セッション単位で分かれば十分だからです。
- 「複数日にまたがるユーザー数」だけは、定義が変わる。 月間ユーザー数は cookieless のほうが多く出ます。比較するときは、ユーザー数ではなくセッション数で揃えるのが確実です。
よくある誤解
「Cookie を使わなければ広告ブロッカーの影響もない」 — これは誤りです。ブロッカーは Cookie ではなく「解析ドメインへの送信」を止めるので、cookieless でも一定の欠損は出ます(実測で数%程度)。件数の正が要る売上・取引数は、注文データから作るのが確実です。
「同意バナーが絶対に不要になる」 — 解析タグ単体では不要でも、サイトに入っている他のタグ(広告のリマーケティング、チャットツール、A/B テストなど)が Cookie を書いていれば、バナーは必要です。判断はサイト全体で行ってください。また上で触れたとおり、バナーが不要でも「何を送信しているか」の公表は別に求められることがあります。
「cookieless なら個人情報は一切扱わない」 — IP アドレスはハッシュの材料として一瞬扱います(保存はしません)。「扱わない」ではなく「保存しない・戻せない」が正確な表現です。
「何を集めて、何を集めないか」は公開されているかで選ぶ
cookieless を名乗るツールは増えましたが、実装はまちまちです。選ぶときは、次の3点が実装に即して公開されているかを確認するのがおすすめです。
- 識別子の作り方(何を材料に、どのくらいの周期で変わるか)
- IP アドレス・ユーザーエージェントを保存するかどうか
- URL のクエリ文字列を全部送るのか、UTM だけなのか(メールアドレスや注文者名が URL に載る店は少なくありません)
NextRise Analytics は、この3点をプライバシーへの取り組みと計測データとプライバシーで、実装のとおりに書いています。判断の材料にしてください。
関連記事
- 2026年9月9日日本の主要ECサイト114件を調べたら、96%がGA4を入れていて、46%に廃止済みタグが残っていた — 計測タグ・同意バナー・表示速度の実態
14ジャンル114件の国内主要ECサイトのトップページを、実際のブラウザで1件ずつ開いて調べました。GA4/GTMの導入率96%、旧ユニバーサルアナリティクスの残骸46%、1サイトあたりのマーケティングタグは中央値7本、Cookie同意バナーは25%、読み込み完了の中央値3.9秒。数字の裏にある「入れたまま」の実態と、自分の店で確かめる方法を書きます。
- 2026年9月7日EC運営者がGA4で毎週見るべき数字は5つだけ — 画面の場所と、見たあとに何を決めるか
GA4は画面が多すぎて、ECの売上に効く数字が埋もれます。毎週見るのはセッション・購入率・客単価・カート通過率・商品ページのカート率の5つで足ります。それぞれのGA4での場所、先週と比べるときの切り口、見たあとに決めることをまとめました。